ミニマリスト ひかるの本棚

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【21Lessons】21世紀を生きるサピエンスへの21の思考

 

 

 

   サピエンス全史では人類の過去について、ホモ・デウスでは人類の未来についてを語ったユヴァル・ノア・ハラリですが、今回読んだ21Lessonsでは21世紀を生きる現代人への21の思考が展開されています。

 

 

 

 個人的な感想としては、サピエンス全史・ホモデウスよりも読み応えがあり、近現代のさまざまな問題、ジェンダー、人種、政治、ポピュリズム、テクノロジーなどについてある程度知識がないと理解できないトピックが多く、読み終わるまでに時間がかかりました。 本書では第1章の幻滅から始まり、21章の瞑想まで21のテーマに分けてハラリが考える現代を生きる我々の問題点や、これからの脅威や希望などについて語っています。

 

 雇用、自由、平等など私たちにとって身近なテーマもありますが、ナショナリズム、宗教、神、テロリズムなど普段耳慣れず難解で馴染みのないテーマまで項目はさまざま。今後どのようなテクノロジーが我々の生活を脅かしたり、豊かにしていくか、未来の雇用にどのように関わってくるか、我々の脳や意識にどう影響を与えるかなど興味深い内容が多数盛り込まれています。

 

 

 

特に気になった点は、

・直感を求められる仕事については AI は人間をしのげる。例えば人があふれている歩道でどのような方向に進むかどう10目の前の人間は信頼に値するかどうかなど。 人間の情動や欲望が生化学的なアルゴリズムに過ぎないならコンピューターがアルゴリズムを駆使してサピエンスより上手くやれない理由はない。

 

・アメリカの道路交通安全局による2012年の推定では、31%がアルコール乱用、30%はスピードの出しすぎ、21パーセントは運転者の不注意散漫が事故では絡んでいたという。 自動運転ならこういうことは一切ない。 自動運転に切り替えるとおそらく毎年百万人の命が救われることになる。 人間の仕事を守るためだけに自動化を妨げるのは愚かな行為である。

 

 

・幅広い技能が必要と同時に予期できない筋書きに対処するような定型化されてない仕事は人間にとって変わるのは難しいだろう。 看護ロボットが手に入るまでには何十年もかかるだろう。



・ 人間は感情が計算であることには大抵気づかない。 計算は迅速に行われて脳内で何百ものニューロンが生存と繁殖の確率を計算している。 繁殖相手の選択、政治についての意見などは自由意思の結果だと誤って人間は信じている。

 

 

・ 2050年の世界についていくには自分自身を何度となく徹底的に作り直す必要がある。 変化のペースが早くなって人間であることの意味も変化しそうだからだ。 教育の研究科は四つの C が必要であると主張している。すなわちクリティカルシンキング、コミュニケーション、コラボレーション、クリエイティビティ。 

 

 

・自分の頭の中に浮かんでくること考える。それはどこから浮かんできたのか、それを思い浮かべることを自由に選んでその後ようやくそれを浮かべてきたのか 。そうではなく、私たちは、このような想念や外の世界の支配をできない。私たちは自分の思考も支配できず、自分たち自分の持っているニューロンが発火するかを命じることもできない。最終的に私たちは欲望に対する反応さえも支配できてないことに気づくべきである。



 最終章に向かうにつれて人間は自分自身が自分でコントロールできていないこと、ハラリが言うような生化学的なアルゴリズムによって動いているということがかなり身近に感じられてきます。昨今ではさまざまな企業がアルゴリズムに基づいてネットで広告を行い、我々の欲望を刺激してきますが、このような刺激に身近に触れている我々は自分自身をコントロールできているのか、そして自分の生きる意味もそのように自分でコントロールができるものなのか、後半にいくにつれて骨太の議論が展開されています。

 

 

 

 

 個人的には最後の瞑想の章がとても心に響きました。 ハラリ自身もともと瞑想をかなり怪しいものだと思っていたそうですが、瞑想を実践してからは自分自身が自分を全くコントロールできてないことに気づき、今では毎日朝22時間瞑想しているとのこと。 私自身も瞑想をしていると普段全然考えてないことや、過去に起こった様々な出来事が自分の考えや制御とは関係なく様々に浮かんでくることに気づきます。 このようなことを体験していると、日常生活で突然怒りを感じたときや、様々な事が起こって心が乱れている時など、今は自分がコントロールできてないということにすぐ気づくことができます。これこそが瞑想の、2500年前に仏陀が実践していたサティ=気づきの重要性なのだと思います。

 

 

 

 

 普段耳慣れないトピックも大幅に扱っている書籍であり大変勉強になりました。21世紀の偉大な思想家の深い思考に触れるための、秋の夜長の読書としておすすめです。