ミニマリスト ひかるの本棚

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【21世紀の啓蒙】世界は確実に進歩している。

 

 

 

 「現在は昔よりも犯罪が増えていて、無気力や厭世観が漂っている」「便利な世の中にはなっているけど、人々の交流は希薄になり関係性が失われつつある」「今なお世界中では貧困が蔓延しており、一部の富裕層のみが私腹を肥やしている」など、もっともらしく色々なところで聞く言葉があります。

 

 

 

 

 

 こちらの21世紀の啓蒙を読了しました。冒頭に書いたような悲観的な言葉は多く聞かれますがそれは誤りで、世界は確実に進歩しているということがさまざまなデータで確認することができ、しかも今なお進歩しているということが理解できる一冊でした。

 

 

 副題にもありますが、人間を進歩させているのは理性、科学、ヒューマニズムであり、啓蒙というのはそもそも無知な状態から抜け出すという意味だそうで、これらが人間の生活環境や盲目的な状態からより良い状態に進歩させているとのこと。では、どうやってということですが、さまざまなことがあり一部を本書から挙げると

 

 

・ニュースはそもそも悪い方向に向かっていると思わせるようにできている。何も起こらなければ何も報じないし、悪いことが起きてないことをニュースにはしない。

・一九世紀以降人類の寿命は伸び続けており、先進国では八〇歳近くになっている。理由は乳幼児の死亡率が下がっていることが大きい。過去には成人になるまでに半分近く死亡していた。また、成人した人もより長く生きるようになっている。

・医学は二〇世紀に入り大幅に進化した。コレラ菌の原因を突き止めたり、消毒や手洗いの重要性に気づいたことで公衆衛生が進歩した。

・社会保障費はその社会が成熟するにつれ支出が増えている。先進国では平均二二パーセント程度支出している。

・生活に必要なさまざまな物は安価になり、さまざまなことを人類は経験できるようになっている。アメリカでは一九二九年に可処分所得の六〇パーセントをその支払いに当てていたが、二〇一六年には三三パーセントに下がった。

・世界は二〇〇年前に比べて一〇〇倍以上豊かになっており、極度の貧困生活を送る人々は一割以下にまで減少している。

・科学の発見によって世界中の宗教・文化的な信念体系(教義や迷信など)が事実に反することがわかってきている。その結果、人種差別や信仰療法、神明裁判などの慣習を徐々に減らしている。

 

 

 このようなものがありますが、それ以外にも世界的に暴力や戦争が減少しているし、労働時間が少なくなって人々は自由に旅行できる時間や文化に触れる時間が増え、さまざまな事故で死ぬ人も少なくなっている。このような事実を科学的にデータで事実を見ようと促す本にファクトフルネスがありますが、本書はそちらよりもよりさまざまな論点について詳述し、かつその進歩に対して理性やヒューマニズムといったものがどのように関連しているかが説明されています。

 

 

 

 アメリカの政治や哲学についての説明は難解な部分も多いですが、私達の生活がどのように改善されてきていて、過去最高に恵まれた環境で生活できているという恩恵について深く理解できる一冊となっています。なかなか骨太な一冊ですが秋の夜長の読書にピッタリなのではないでしょうか。