【推し、燃ゆ】熱狂的ファンの描写に圧倒されました。
去年芥川賞を受賞した本書をようやく読了しました。大きい文芸賞を取った作品はだいたい図書館でも数百件待ちになるのが常なのですが、本書は話題性も大きかったためかそれ以上に待ってようやく読むことができました。(ネタバレありません)
とても驚いたのは著者がまだ大学生であるということ。学生ながらにこのような語彙力・表現力を持っていることに驚きながら読み進めました。そして、あまり自分には縁がない「ファン」の方の、特定のものへの情熱の傾け方やその心情の描写に圧倒されました。
狂信的とも言うべき熱狂を持ってなにかに没頭することと、本書的な言葉で言えばその「業」ともいうべきものについて普段は触れることがない世界でしたが、おこがましくも少し理解ができたように思いました。
こちらのインタビューもとてもおもしろかったです。日常生活で関わる人々は相互的、こちらの感情に対してなにかしらフィードバックがあるものですが、「推し」に関しては一方的であることに救われるというのはなんとなくわかる気がしました。「推し」はいませんが、人と違うことに夢中になる多くの人に共感される素晴らしい小説だと思います。