ミニマリスト ひかるの本棚

書評がメインのブログです。

【エデュケーション】教育が持つ強大な力

日本で翻訳される前から読書家であるオバマ前大統領の推薦図書として紹介されていたり、ビル・ゲイツ氏のブックリストで取り上げられて話題になっていたこともあり楽しみにしていた一冊でした。英語タイトルはEducated。

 

 

※ネタバレあり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 休みを利用して一気に読み終えてしまいましたが、教育の持つ力についてこれほど読者に問いを与える書物はなかなか無いのではないかと思わせる一冊です。

 

 

 

 著者のタラ・ウェストーバーはアイダホ州のモルモン教徒の両親の元に生まれ、信仰に篤い両親の下で育てられるのですが、教育は政府の陰謀であるとして公教育は一切受けさせない、また医者や看護師も神に背く者たちとして一切信用せず、命を落とすような大怪我や火傷に対しても自作で調合したオイルを塗るだけという処置を行う、今現在一般的に普及している教育を受けた者からはとても信じられない生活をされていました。

 

 

 

 また、母親は助産師として出産の手伝いを仕事としているのですが、こちらも薬草と自作のオイルのみに頼る医療とはかけ離れた行為であり、その手伝いを幼い頃からするというとても現代の話とは思えないような話が続きます。

 

 

 

 本のサブタイトルにもなっている「大学は私の人生を変えた」という言葉にもある通り、著者は公教育を一切受けていないにも関わらず、独学と近親者からの指導でACT(アメリカン・カレッジ・テスト、日本の大検のようなもの)に合格。ユタ州のブリガム・ヤング大学に入学し、その後ケンブリッジ大学・ハーバード大学にも在学して哲学博士の学位を得るにまで至るという素晴らしい経歴をお持ちです。世間一般ではサクセスストーリーとして派手にもてはやされそうな経緯で、それだけだとよくあるビジネス書などの成功方法として売り出されそうな内容ですが、本書が重きを置いているのはあくまで教育。

 

 

 

 生まれてから長い期間、特に父親から長きに渡って多くの人々が受ける教育とはまったく別の教えを施された上に、命が脅かされるような危険な作業を強制されたり、世間一般とかけ離れた生活様式を強制された過去。また、実の兄からの壮絶な虐待を受け、恐怖に怯えながら暮らしたことによる自尊心の欠如や他人に対する不信感。大学教育を通して身につけた知識やカウンセリング、友人の助け、そして自分自身の内省などで徐々に乗り越えていく姿をとても力強いと感じるとともに、教育の持つ力について誰もが考える機会となるのではないかと思いました。

 

 

 

 ここまで極端でなくとも、非科学的な民間療法を信じることや、非常に偏った政治的な思想、すでに時代遅れとなったり誤ったものとして現在は否定されている過去の情報などを真実と思い他人に話すことは多くの人に経験があることのように思います。教育が持つ力、それが人にとって諸刃の剣となることがわかる名著、すべての人におすすめの一冊です。

 

 

 

 

 

 

ランキングに参加しています。もしよければ下のアイコンをクリックお願いいたします。

ブログランキング・にほんブログ村へ