【オスカー・ワオの短く凄まじい人生】何にも似てない、まったく新しい小説
小説の記事はほとんど書いたことがないのですが、月に数冊のペースで読んでいます。ネタバレしないように書くのが難しいのと、ビジネス書や学問の本と違って有益な情報を学ぶ目的で読むのとは違うので、引用やメモをほとんどしないのも書くのが難しい点です。
しかし、先日読んだこちらの小説が非常に刺激的で、今までまったく読んだことのないタイプの本だったので紹介してみたいと思います。
オスカー・ワオの短く凄まじい人生
新潮クレスト・ブックスは読みやすい海外小説が多いのでよく手に取ります。こちらの本は前情報は一切なく、図書館内で書棚を何気なく見ていた時に目につきました。本の表紙が魅力的で借りるということはよくあるのですが、こちらはタイトルのインパクトがとにかく強かった。「短く凄まじい人生とはどんな人生か」。少しも立ち読みすることなくすぐに借りました。
物語はドミニカ共和国出身の太ってモテないオタクの少年、オスカー・ワオを中心に、彼の家族の周囲の出来事と過去をめぐって描かれる叙事詩。ドミニカ共和国がどこにあるのかや、その政治体制についても事前知識がゼロでしたが、難しい話はまったくないので非常に読みやすいです。
劣等感を抱え、気弱なオスカー・ワオの生きづらさ、主人公と対照的に美貌を備えた姉や母の苦悩やそれゆえの困難が鮮やかに描かれていて、人間の無い物ねだりという性、望むものを手に入れたからといって誰もが幸福になれるわけではないという人間社会の事実をまざまざと見せつけられます。
物語自体が「凄まじく」面白いのも魅力的ですが、もうひとつは作者の言語感覚も「凄まじく」この作品をすばらしいものに仕立て上げています。世の中には数多くの本があり、数えきれないほどのフィクションが創作されていますが、この表現はこの作家でなければできない、まさに唯一無二の小説だと思います。
ぼくが海外小説をよく読むのは、まったく違う文化や嗜好、考え方を知ることができるというところ。ドミニカ共和国やアメリカ合衆国、どちらも行ったことのない国ですがあらためて一度その文化に触れてみたいと感じさせてくれる作品でした。
あまり海外小説を読まない方、新しい感覚に触れてみたいという方にはおすすめの一冊です。
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