ミニマリスト ひかるの本棚

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幸福について

 

人間はさまざなものを発明することができる。幸福になる方法を除いては。

 

 

 これはかつてフランスの皇帝であったナポレオンの言葉です。ナポレオンはかつて、地位、名声、富、なにもかもを手に入れた人物でしたが、最後の日々を過ごした流刑地のセントヘレナ島で「私の人生で幸福な日々は6日もなかった」と言い、生涯を終えています。

 

 一方、盲目、聾唖などさまざまな重度の障害を抱えていたヘレンケラーは「人生とはほんとうに美しいものだと思います」と断言している。

 

 誰もが望むものを手に入れた皇帝が一生のほとんどの期間を不幸と感じ、厳しい障害を持っている方が幸福を感じているとすると、そもそもの問いが浮かんでしまいます。

 

 幸福ってなんだろう。

 

 

幸福について(書評です)

 

幸福について―人生論 (新潮文庫)

幸福について―人生論 (新潮文庫)

 

 

 人間の生は苦しみに満ちているという、という人間観を持っていたショーペンハウアーというドイツの哲学者の幸福についての著作。厭世主義者と言われるショーペンハウアーですが、その苦しみに満ちた人生の中で幸福であるとはどういうことかということについて書いています。

 

気になった点を記載してみたいと思います。

 

 

 

幸福の条件

 

幸福は容易に得られるものではない。幸福をわれわれのうちに見いだすのは至難であり他の場所に見いだすのは不可能である。

 

客観的な半面がいかに美しく、いかに良くても、主観的な半面が 鈍くて悪ければ、美しい風景を悪天候のもとに眺め、あるいはがらくたのカメラのレ ンズで見るように、劣悪な現実、劣悪な現在と化するのだ。もっと平たく言えば、人 間はそれぞれ、自分が皮膚をまとっているのと同様に、自分の意識のなかに厳まりこ んで、直接には自分の意識のなかだけで生きているにすぎない。だから人間は外部から救いの手を伸ばしてもたいして救われないものだ。

 

 

幸福と享楽にとって、主観的なものが客観的なものよりも比較にならぬほど重要だということは、空腹にまずいもの無しとか、青年を惑わす女菩薩もどこ吹く風かと過す老人の心境とかいうようなことから、天才や聖者の生き方に至るまで、事々に実証される。ことに健康はいっさいの外部的な財宝にまさること万々であるからまこと健康な乞食は病める国王よりも幸福である。

 

 

外部の豊かさより内面の富

 

 必要で適当な生活の資をことを怠るべきだなどと誤解してはならない。けれども富といいうるほどの富、すなわち有り余る富は、われわれの幸福にはほとんど何の寄与するところもない。金持ちに不幸な思いをしている人が多いのはそのためである。なぜ不幸な思いをするかというと、本当の精神的な教養がなく、知識もなく、したがって精神的な仕事をしうる基礎となるような何らかの客観的な興味を持ち合せていないからだ。

 

 

 しかしなんといっても、人としてのあり方のほうが、人の有するものに比して、われわれの幸福に寄与することがはるかに大であるにちがいない。それにもかかわらず、人間は精神的な教養を積むよりも富を積むほうに千万倍の努力を捧げている。 

 

 


内面を煩わされないために

日々の煩わしい出来事とか、人間の交際に見られるけちくさい軋轢とか、取るにも足らぬ不快な事件とか、他人の不作法とか、口さがないおしゃべりとか、そのほかいろいろそうしたことに対しては、不死身にならねばならない。すなわちそういうことを感じたり、まして気に病んだり、くよくよ考えたりしないようにしなければならない。こういったことは何一つ自分に近づけないようにし、道の小石のように突きのけなければならない。これを取り上げて心のなかで熟考したり、思案に思案を重ねたりしては絶対にならない。

 

 

人の意見を反駁せぬがよい。人の信ずる不合理を一々説いて思いとどまらせようなどと思ったら、メトセラほどの高齢になってもけりがつくまいということをよく考えてみるがよい。またいかに好意があっても人を矯正する意味の言葉は、対談の際、いっさい慎むがよい。人の感情を害するのは容易だが、人を矯正するのは不可能とまではいかなくても、困難だからである。

 

 

 ずいぶんひどい個性だと思われる場合には、「こうした変り者もあるものだ」と思うがよい。そう思わなければ、相手を侵害して生死を賭ける闘いを挑むことになる。なぜかというに、相手の真の個性すなわちその道徳的性格・認識能力.気質、人相などは誰もこれを変えることができないからである。

 

人の行為に腹を立てるのは、行く手に転がってきた石に腹を立てるのと全く同じ愚かさである。

 

内面的な富をもっていれば、運命に対してさほど大きな要求はしないものである。これに反してばかは死なねばなおらない。うどの大木は死ぬまでうどの大木なのだ。

 

 

現代との比較

 幸福を研究しているロシアの心理学者ソニア・リュボミアスキーさんの研究によると幸福を決定する要素は、

 

遺伝 50%

行動 40%

環境 10%(住んでる家や場所、天気、外見、教育など)

 

であると述べておられました。

 

幸せがずっと続く12の行動習慣

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 もともとその人が持っている気質、どういう行動を取るかということが自分の幸福に資するところが多いということは現代のポジティブ心理学の研究と、ショーペンハウアーの考察と重なるところが大いにあると感じました。

 

 また、ぼくはこれと合わせて人生には三つの健康が必要であると考えています。以前投資の講座で聞いた考え方なのですが、

 

身体の健康  ・・・ 食事、適度な運動、重い病気を持っていない等

こころの健康 ・・・ 生きがい感、やりがいのある仕事、友人・家族との親密感等

お金の健康  ・・・ 適切な収入と収支管理、人生を楽しむための資産等

 

 これらが総合的に満たされることで、より充実した人生を送ることができると考えています。特にそれにはこころの健康が寄与するところが多く、一番大事な土台になるのではないかと勝手に解釈しています。重い病気や厳しい境遇でも、楽しそうに生活をしている人を少なからず知っているので。

 

 幸福の定義は人それぞれと思いますが、自分にとってのそれとは何かを考える時にヒントがたくさん散りばめられた素晴らしい本だと思います。有名な本なので、気になったところが少しでもあればぜひ図書館などでご覧頂ければと思います。

 

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