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【トーキング・トゥ・ストレンジャーズ】他人のこころは読めるのか。

 マルコム・グラッドウェルさんのトーキング・トゥ・ストレンジャーズのブックレビューです。世界的なベストセラー作家ですが、読むのは初めてでした。結論としては、やはりベストセラー作家だけあって非常に興味深く、引き込まれる良書でした。

 

 

 

 

 



 本書の大きなテーマは他人が考えていることは分かるのかということになります。 副題にも書いてあるのですが、よく知らない人について私たちが知っておくべきこと、言い換えると 他人の心は読めるのかでもいいかもしれません。




  冒頭はアメリカで起きた事件から始まります。 サンドラ・ ブランドと言う黒人女性が、白人の警察官に車を乗っている時に尋問を受け、特に何も犯罪を犯していないにも関わらず拘束され、その後拘置所の中で自殺をしたという事件が紹介されます。まず初めの大きな謎として、このようなことはなぜ起こってしまったのかそれを解き明かすために本書は様々な心理学や社会学的な理論を参照しながら、その謎を追いかけて行きます。



  本書の大きな理論の枠組みとしては、人は相手を信用するように初期設定されているのではないかというデフォルト理論、人の心の内の感情は表情に表れるという透明性、行動と場所が密接に関連するという結びつき(カップリング)などが紹介されており、どれも非常に興味深く、読むとどんどん引き込まれていきます。



 

 歴史上で起こった様々な事件にも言及されており、例えばイギリスの首相を務めたチェンバレンはなぜアドルフ・ヒトラーの残虐な性格を実際にあったにも関わらず見抜くことができず 戦争に巻き込まれてしまったのか。バーナード・メイドフという実業家に、世界中の名だたる企業や投資家がなぜ騙されてしまったのか、アメリカの最高の情報機関である CIA の中にいたキューバのスパイを、なぜ何年も潜伏させてしまったのか。

 

 

 その他にも、特定の犯罪は特定の地域の特定の通りで起こること、自殺者の減少と社会環境の変化について(カップリング)など、本書を読むことで社会で起きている現象の見方が大きく変わることは間違いありません。



  他人の心を読むことができるのか。 本書を読んでこの問いに YES と答えられるわけではありませんが、本書が言うように見知らぬ他者に関わる事においてどのような勘違いや、エラーが起こるのかということが理解できるようになると思います。心理学関連の本が好きな方には特におすすめです。