ミニマリスト ひかるの本棚

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【ヒトはなぜ「がん」になるのか】がんとは生物の進化が生んだもの

 

 

 キャット・アーニーさんとヒトはなぜ「がん」になるのかのブックレビューです。

 

 

 

 

 専門的な内容で難しいところも非常に多かったですが、多くの人が人生の後半で発症する癌という病気について多くの理解を得ることができました。

 

 

 

  この本の副題にあるように、がんというのは私たち生物の進化の過程で生まれたものの一つであるということ。 何がなぜ発生するのかということに関しては、私たちの細胞が分裂するときに遺伝子に変異が起こり、その際に癌を抑制する遺伝子は働かなくなることで細胞がうどんどんとがん細胞ができてしまうこと、 抗がん剤などは秘密兵器として一発で癌をやっつけるのはなぜできないのかということなど、今まで全く知らなかった癌についての知識を多く得ることができました。

 

 

 

 ちょうど別の本で癌についてのことを学んでいたところでしたが、驚いたのは書かれている年代やことを学んでいたところでしたが、驚いたのは書かれている年代や著者によって考え方が全く違うということ。例えば、何がどのように発生するかという遺伝子が変異についての説明に関しては特に大きく変わったところはないのですが、他の多くの本では野菜をとにかくたくさん食べること、ストレスをとにかく減らすこと、断食をすることなどががんの特効薬であるように書かれていますが、こちらの本を読んでいくとそのようなことだけではやはり癌は全て防ぐのは難しいということがわかりました。

 

 

 

  もちろんこちらの本が何についてのすべてを語っているわけではないと思いますし、上記のような方法で胃がんを克服した多くの方がいるということもあるのだとは思いますが、生物というのは本当に不思議でありとても複雑な機構を持っているということを理解しておくと、自分がもし病気になったらという時や、予防に勤める時にもひとつの知識に対して盲目的にならずに済むのではないかということを強く感じました。

 

以下は本書で気になったところで、

 

 

・ガンは人特有のものではない。多細胞生物の多くはガンになる種が多く見られている。また、ガンと呼ばれていなくても植物などは細胞が異常に増殖することなどが観察されている。多細胞性を獲得した生物は一部例外はあるがどんな生物種にも生ずる。

 

 

・個体が同じであればサイズがでかい方が細胞が多いためがんになりやすい。

 

 

・多細胞生物はアポトーシス、細胞が自死するプログラムを持っている。日焼けした時に皮膚がむけるのもアポトーシスである。がんはアポトーシスを故障させ、細胞が増え続け死なないようにしてしまう。



・がんは元は私達の細胞であり、それが体内のルールに従わずに奔放に増殖して広がっていく現象

 

 

・人の全ての細胞には同一遺伝子の二つのコピーがあり、それは父と母から来たものである。 細胞が無制限に増殖するのを防ぐがん抑制遺伝子にも二つのコピーがあるが、 それが一つだけ故障しても正常に保たれるが、二つとも昨日損なわれると正常ではなくなってしまう。 これをツー・ヒット仮説と呼ぶ。

 

 

 

・多くのがんは六十歳以前に発生することは少ない。ただし、これは遺伝子の変異が六十歳以降に多く起きるということを意味しているのではなく、大抵の遺伝子の変異は 成人前までに半分は発生している。喫煙者は肺がんになりやすく、遺伝子の変異をする確率もあげているが東店これが人生の初期に肺がんになる確率を上げているかといえばそうではない。 喫煙は肺がんになるかならないかに大きな影響を与えるが、いつなるかということにはあまり影響しない。



 

・ガンを避けるのであればなるべく DNA に損傷を与えるようなことをしないことが賢明な選択であるが、健康的な生活をする東店禁煙をする、日焼けに注意する、野菜をたくさん食べるなどはがんリスクの低減の関連性が見られているが、私たちはなぜそうなるのか分かっていない。



 

・細菌が薬剤に対して耐性をつけるように、がん細胞も抗がん剤などに対して耐性を身に付けるものがある。生物の進化の環境と同じように。こうしたものががん細胞にとって選択圧となり、がん細胞は生き残るために変容を遂げるようになる。 そのため、抗がん剤などで多くのがん細胞が死滅する場合であっても、対戦を持っている細胞が生き残りその後増殖を始めてしまう。 がん細胞は他の生物と同じく進化のシステムが機能しているのだ。 



・がん細胞はなぜ転移するのか。それは、 がん細胞にとって有毒な環境、免疫細胞が強く働いているところなので生き残るのが難しい場合は、ここで死ぬよりは別のところに行こうとして血液にの流れに乗って手にすると考えられている。 このロジックでいくと、糖質制限でがんを植えさせるというダイエット法は極めて有害である。 なぜかといえば、糖質制限で癌を見させようとすれば、その元は栄養を求めて別のところに移動してにしてしまうからである。

 

 

 ただ単に恐ろしい病気ということで恐れるのではなく、どのような病気なのかを事前に知っておくことで人生をどのように生きるのか、健康にどこまで投資するのかや楽しむために多少の不摂生を受け入れるのかなども変わってくると思います。非常に濃厚で多くのことを学べる良書でした。