ミニマリスト ひかるの本棚

書評がメインのブログです。

【ブルシット・ジョブ】どうでもいい仕事はなぜ生まれるか

★★

 

 

 

 

 先日読みました、デヴィッド・グレーバーのブルシット・ジョブのブックレビューです。

 

 ブルシットジョブとはタイトルにある通り、くそ仕事、役に立他ない仕事のことを意味します。厳密な定義は本書に譲りますが、やっている本人もわかっている無意味で不必要で有害な有償の仕事のことです。会社員を経験したことがある方は誰もが多かれ少なかれ思い当たることがある仕事があるのではないでしょうか。また、そのような仕事は有益な仕事、例えばエッセンシャルワーカーよりも概して高給であることが多いというから余計にやっかいです。



 なぜブルシット・ジョブが生まれるのか。一つの要因として、雇用目的仕事、つまり仕事があるから人を雇うのではなく、大した仕事や目的がなくとも体面上人がいなければならないために作られた仕事があげられる。そのような仕事は雇用主からすると膨大な空き時間が発生するため、穴埋め仕事、無駄に厳格化された書類や手続きが用意されていて、その処理に労働時間の大半が費やされるにです。



 本書で述べられているブルシットジョブの類型は主に5つ。

・取り巻き

→誰かを偉そうに見せたりするために抱えられる人材。ドアマンや、ほとんど仕事のない秘書や受付など。

 

・脅し屋

→無理に需要を作り出して商品を売ったり、全然役に立たないものを売るセールスマンなど。

 

・尻ぬぐい

→その組織に欠陥があるために存在している仕事。非効率なシステムの修正をさせられるプログラマーや、デジタル化されていないために発生している無駄な書類仕事など。



・書類穴埋め人

→組織がやっていないことをやっているように見せるために雇われている仕事。誰も見ないし確認もしない書類作成、保管など。

 

・タスクマスター

→他人への仕事の割当をする仕事やブルシットな仕事を作り出す管理職など。

 

 必ずしもこれと当てはまらずに横断的なブルシットジョブも多数存在していると思いますが、読んでいて会社員時代にはたしかにこのような仕事が多々あったことが思い出されました。

 また本書の中で言及されているオバマ大統領の演説の一部では、 合理化の弊害として多くの仕事を効率化することで多数の仕事のブルシットジョブが消滅することを危惧している場面がありますが、役に立たないとしてもそれで生活をしている人がいる以上、今後もそのような仕事が消えることはなくむしろ生まれていくのだと思います。

 

 そしてよく言われるAIやロボットによる効率化で仕事の多くが失われるという議論に関しても、定型的な仕事であってもそう簡単には物事は進まず、仕事のために仕事を生み出すという非効率な営みは人がいる以上続けられるのではないかと感じました。

 

 本編だけで400ページ近くある読み応えのある本ですが、非常に興味深い内容が多い一冊でした。