【AI vs 教科書の読めない子どもたち】AIと生きる未来
一時期に比べると随分減ったと感じますが、新聞やネット記事、CMなどではAIについての話題が尽きません。特に誰もが敏感になるのはAIが人間の仕事を奪うーーという類のもの。自分の仕事は将来機械に置き換えられてしまうのかと思うと不安になるのは当然だと思います。
AIができること、できないこと
先日読了した「AI vs 教科書が読めない子供たち」の書評です。
【2019年ビジネス書大賞 大賞】AI vs. 教科書が読めない子どもたち
- 作者: 新井紀子
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2018/02/02
- メディア: 単行本
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ずっと読みたい読みたいと思っていたのですが、図書館で予約をしようと思ったら300人以上待ちという人気ぶり。いっそのこと買ってしまおうかとも思いましたが、ベストセラーとなっていたので図書館で保管している数も多く、思ったよりも早く順番が回ってきて読むことができました。(それでも2ヶ月以上待ちました)
本書を読んでの率直な感想は、AIが代替できる仕事というのはすでに世の中にたくさんあるな、ということ。タイトルからも連想できる通りですが、AIは教科書が読めない、つまり文章を読んで意味を理解することはできません。では何をしているかというと、統計で処理をしているとのこと。
繰り返し同じ作業をすることや、限られたフレームの中で計算をすることなどはAIの得意分野ですが、逆に意味を解釈してそこから新たな発想をすること、文章を理解することは苦手だそうです。(そもそも文章を理解する、ということ自体が人間にもどういうことかいまだに分かっていない部分もあるそうです)
気になった部分を引用してみます。
AIが神になる?ーーなりません。AIが人類を滅ぼす?ーー滅ぼしません。シンギュラリティが到来する?ーー到来しません。(中略)
AIは神に代わって人類にユートピアをもたらすことはないし、その能力が人智を超えて人類を滅ぼしたりすることはありません。
AIに仕事を取られて失業するっていうのは嘘か。安心したーー。もしかして、そう思われましたか。残念なことに、私の未来予想図はそうではありません。シンギュラリティは来ないし、AIが人間の仕事をすべて奪ってしまうような未来は来ませんが、人間の仕事の多くがAIに代替される社会はすぐそこに迫っています。
自然言語処理では、そもそも何を計算すればよいよかがわからないような問題が山積みです。つまり、どれもこれもスパコンを使えば計算できるという類のものではありませんでした。そのいみで、「スパコンの能力が向上しさえすれば、人間の知性を超えられる」というのは出鱈目です。
そこそこのサーバーを使って5分で解けない問題は、スパコンを使っても、地球滅亡の日まで解けない
AIは意味を理解しているわけではありません。AIは入力に応じて「計算」し、答を出力しているに過ぎません。AIの目覚ましい発達に目が眩んで忘れている方も多いと思いますが、コンピューターは計算機なのです。計算機ですから、できることは基本的には四則演算だけです?AIには、意味を理解できる仕組みが入っているわけではなくて、あくまでも、「あたかも意味を理解しているようなふり」をしているのです。
社会にとって重要なのは、AIに今の仕事を奪われた人の大半が、リストにあるような仕事に、あるいはAIの登場によって創造される、これまでになかった、AIにはできないけれども人間にはできる新たな仕事に転職できるかどうかです。そうでなければ、多くの人が失業してしまうからです。そんなことになったら社会は大混乱です。その影響は、職を失わなかった人にも及ばないはずはありません。
AIの弱点は、万個教えられてようやく一を学ぶこと、応用が利かないこと、柔軟性がないこと、決められた(限定された)フレームの中でしか計算処理ができないことなどです。
中学校を卒業する段階で、約3割が(内容理解を伴わない)表層的な読解もできない。
読解能力値と進学できる高校の偏差値との相関は極めて高い。
読書の好き嫌い、科目の得意不得意、1日のスマートフォンの利用時間や学習時間などの自己申告結果と基礎的読解力には相関はない。
私が最近、最も憂慮しているのは、ドリルをデジタル化して、項目反応理論を用いることで「それぞれの子の進度にあったドリルをAIが提供します!」と宣伝する塾が登場していることです。こんな能力を子どもたちに重点的に身につけさせることほど無意味なことはありません。問題を読まずにドリルをこなす能力が、最もAIに代替えされやすいからです。
「ウェブ」という言葉が魔法のように見えた2000年、ウェブクリエイターはホームページを作れるというだけでらもてはやされました。しかし、10年でその価値は暴落しました。重要なのは、新しいソフトウェアを使いこなすことができるかどうかではないのです。その中身、使うべきポイントや弱点を論理的に理解しているか否かです。
著者の新井紀子さんのインタビューが日経の1面に掲載されていましたが、読解力をきちんと身につけることがより重要であることがよく理解できました。
ぼく自身読書をするほうだとは思いますが、読解力はそれとは別もの。現に本書に記載されていた読解力テストの内容を読んでしばらく考え込んでしまいました。いかに普段読めていない部分があるのかを思い知らされました。本書は2019年のビジネス書大賞を受賞されたそうで読み応えがあり、今後の仕事を考える上でも非常に役立つ1冊だと思います。
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